錬金術師ゲンドウ

アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の二次創作(ファンフィクション)として、最初のテレビ放送終了後二年たってから書き始めた作品です。キャラクターだけ借りて独自の魔法世界での生活と冒険を描いた小説です。

原稿用紙にして1500枚を超える長編です。電子書籍フォーマットにもしていますのでダウンロードする場合は下のDropboxからお願いします。対応している電子書籍フォーマットはepubとmobiです。読み方はお使いのデバイスによって異なります。お手数ですが検索願います。
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  • 第一話 「ゲンドウとその家族」

    第一話「ゲンドウとその家族」碇(いかり)一家の住まいは、街の高台にある古びた和風の木造二階建てである。玄関には、桧(ひのき)作りの『公認錬金術師 碇ゲンドウ』という看板がかけられている。五○坪の敷地には、小さな菜園があり、そこでゲンドウの妻…

  • 第二話「レイの病気と『シゲル君』登場!」

    「マキコちゃん、元気い?」ゲンドウは息子の部屋に勝手に入り、円筒形のガラス瓶の中に浮かんでいるレイに話しかけていた。「あれえ、どうしたの? こっち向いてくれないのかな」ゲンドウは猫なで声で話しかけるが、透明な培養液の中の小さなホムンクルスは…

  • 第三話「台風がやってきた! (前編)」

    碇ゲンドウは錬金術師である。彼は久しぶりにその本業である金作りにいそしんでいた。彼の仕事場は自宅である木造二階建ての一階の座敷を改造した実験室だった。畳が外されているのはもちろんのこと、部屋の中央にデンと据え付けられた「反応炉」の部分は床さ…

  • 第四話「台風がやってきた! (後編)」

    土曜日の明け方。ユイは、風の音で目を覚ました。隣に夫のゲンドウが寝ている。いぎたなくいびきをかいていた。薄い色の付いた眼鏡を外し、口をうっすらと開けている。寝顔を見ていると、やせっぽちの、ひょろりとした青年の面影がある。ゆ、ユイさん、今度須…

  • 第五話「クリスマスのまぼろし」

    アスカは日本の中学校が好きになった。ダサイ制服もおもしろかったし、担任の年寄りの先生の独特なものの言い方も気に入った。あの世界に名だたる、シュールな『コーソク』は夢中になった。アスカは全校でいちばん校則を喜んで守る女生徒かもしれなかった。彼…

  • 第六話「ストレート、ノーチェイサー」

    正月も六日の小春日和の朝、その電車の中の乗客は不思議な光景を目にしていた。トレンチコートを羽織った三十代前半の男が、眠っている初老の男に話しかけているのだった。「わかったよ、わかった。俺がわるかった。二月号で訂正記事を載せるように編集者に言…

  • 第七話「ゲンドウ不倫する?」

    公認錬金術師、碇ゲンドウの朝は遅い。目を覚ますと、息子の居候の小娘は中学校に行ったあとだし、妻のユイは自分の部屋にしている納戸の中で薬草をこね回している。彼は、のそのそと台所へ行き、食パンを一切れオーブントースターに放り込むと五の目盛りまで…

  • 第八話「魔法使いの弟子」

    魔法使いの卵、碇シンジの朝は早い、と書き出すと第七話の書き出しと似たようなものになってしまうが、早いのだからしょうがない。午前六時、枕元の目覚まし時計が鳴る。まず起きるのは勉強机の上に置かれたガラス瓶の中の小さな妖精、レイだった。彼女は赤い…

  • 第九話「ヴァンパイア・ハンター」

    商店街の一角にある、冬月コウゾウの古書店の営業時間は、朝一○時から夜の七時までである。十四年前に開業してから、定休日の月曜日を除く毎日、休むことなく営業している。店主としてのコウゾウはいつも居眠りしてばかり、売り上げもたいしたことはない。そ…

  • 第十話「闇の王子(前編)」

    そのヘリコプターは、砂漠の町から飛んできたのだった。白い機体には、向かいあう獅子(しし)の紋章が付けられていた。機内には三人の男がいた。一人は操縦士。一人は眼鏡をかけた税理士を思わせる男。もう一人は、肩まで伸ばした金髪に、口ひげを生やした男…

  • 第十一話「闇の王子(後編)」

    日本は平和だった。意外なほど平和だった。日本からはるか離れたアメリカはアリゾナ州の巨大な要塞のなかで、アメリカ大陸担当の『ウィザード』、『ウィズ・ブリティッシュ』が落胆するほど平和だったと言っていい。彼にしても『闇の王子』が、巨大な、頭が三…

  • 第十二話「さよなら、レイ」

    碇ユイは、どこか宗教的な、荘厳な音楽が鳴り響く夢から目を覚ました。薄暗い。傍らの夫は相変わらず間抜けな顔をして眠っていた。眼鏡を外すと、ひどく年を取ったように見えだした。白髪も見つけた。あなただけが頼りよ、彼女はそう思ってみる。そんな風に思…

  • 最終話 「愛の錬金術」

    『闇の王子』は、倒れている少年と、その少年を必死に守ろうとしている愚かなアストラル体を見下ろしていた。そのとき、十四歳の少年の肉体を持つ彼の耳に、この街の様々な音が流れ込んでいた。犬が、町中の犬たちが一斉に空に向かってほえていた。威嚇すると…

  • あとがき

    「錬金術師ゲンドウ」を書いたのは、前世紀になるんですね。二十世紀末。この作品を土台にして「福音の少年シリーズ」というライトノベルのシリーズを七冊書きましたが、ウェブで公開していた二次創作のほうの「錬金術師ゲンドウ」という作品そのものに手を入…